* 熊本地震震災ミュージアム 体験・展示施設  熊本地震震災ミュージアム体験・展示施設KIOKUは、平成28年熊本地震の記憶を未来へ遺し学ぶ回廊型フィールドミュージアムの中核拠点施設である。 断層が直下にありながらも倒壊せず、表出した断層と共に震災遺構として保存された旧東海大学阿蘇校舎1号館に隣接し、展示学習、教育、交流などの機能を有し、自然の驚異や地震からの教訓などを発信できる場づくりが求められた。 数万年に渡り人間の生活が繰り広げられ、特有の文化や景観を育んだ阿蘇カルデラを中心とした周囲の雄大な自然環境を意識して設計されたこの施設は、熊本地震の記憶を後世に伝えるとともに、自然の厳しさだけではなく、それと表裏一体となった自然の豊かさや恵みを感じることができる建築物といえる。
* 建築概要 熊本地震の記憶を未来へと遺し学ぶ回廊型フィールドミュージアム「熊本地震 記憶の廻廊」の中核拠点である体験・展示施設の計画である。 敷地は南阿蘇村の旧東海大学阿蘇キャンパス内に位置し、特に阿蘇の自然の雄大さを感じられる場所であった。旧1号館をはじめ震災遺構が周囲に残された立地であることを踏まえ、体験を建物の中だけに閉じず、風景に呼応したおおらかな屋根をかけることで、周囲を眺めながら訪れる人がそれぞれの方法で自然の力を感じとり、考えることを促すミュージアムを目指した。 建築は流れるような平屋の屋根を、敷地を横切るようにかけている。屋根の稜線が風景を切り取るフレームとなり、建物の内にいても外にいても、敷地外の遺構や阿蘇の風景を印象的に感じられるような計画とした。 展示空間は、大きく3つの内部空間に分かれ、それらを半屋外の軒下で繋いでいる。屋内には熊本地震の事実や熊本の自然を「知る・感じる」展示、半屋外の軒下では自然の風景と向き合い、来館者自らが「考える」ことを促す展示となっている。 構造は熊本県産の杉、桧を用いた屋根の架構と水平力を負担するRC壁で構成され、一部スパンのある棟に鉄骨を用いている。コンクリートの壁や床は、洗い出しやショットブラストとし、阿蘇地域で使われる山鹿産の骨材の色味を活かした仕上げとしたほか、屋根には野焼きの灰や阿蘇黄土を釉薬に使用したオリジナルのタイル、子どもたちとワークショップで作った、地域の石を使った人造石研ぎ出しなど、リサーチを通して得られた熊本由来の自然素材や色を随所に使っている。 建築と展示が一体となり、この場所にしかない体験を随所に取り込むことで、熊本地震から得られた教訓を継承し、さらには県内各地に広がる「記憶の廻廊」へとつながる場所になることを願っている。
 Photo/Takumi Ota
* 建築データ 名称 熊本地震震災ミュージアム 体験・展示施設 所在地 阿蘇郡南阿蘇村河陽5343-1 主要用途 博物館 事業主体 熊本県 設計者 大西麻貴+百田有希+産紘設計 施工者 建築 橋本・豊建設工事共同企業体 電気 株式会社昭電社 機械 協成設備工業株式会社 造成 株式会社ケイディ工業 造園 株式会社緑研 舗装 株式会社藤本建設工業 外構 株式会社大電工、有限会社大塚組 展示制作 株式会社乃村工藝社 敷地面積 27,027.99平方メートル 建築面積 1,578.87平方メートル 延面積 1,210.29平方メートル 階数 地上1階 構 造 木造+鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造) 外部仕上 屋根 シート防水+発泡系断熱材の上特注タイル 外壁 コンクリート洗い出し仕上げ、コンクリートの上微弾性塗装 施工期間 2022年03月~2023年06月 総事業費 1651百万円
* 建築家プロフィール * 大西 麻貴(おおにし まき) 1983年 愛知県生まれ 2006年 京都大学工学部卒業 2008年 東京大学大学院修士課程修了 2008年 大西麻貴+百田有希/o+hを 共同主宰 2016-年 京都大学非常勤講師 2022-年 横浜国立大学大学院 Y-GSA教授
百田 有希(ひゃくだ ゆうき) 1982年 兵庫県生まれ 2008年 京都大学大学院修士課程修了 2008年 大西麻貴+百田有希/o+h を共同主宰 2009-14年 伊東豊雄建築設計事務所勤務 2017年 横浜国立大学非常勤講師
Photo/Yurika Kono(顔写真)
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/115/4615.html
熊本地震震災ミュージアム 体験・展示施設 (PDFファイル:1.24MB)
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