* 立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレ 35歳以下の若手技術者を対象とした公開設計競技。279件の応募の中から選定された「森と人の輪」。 県民の生活環境を保全し、健康づくりやふれあいの場として活用されている立田山の豊かな自然と調和する小径の丸太材によるレシプロカル構造。 立田山散策の接点となるこの場所から森と人の共生が生まれることが期待される。
* 建築概要 トイレは森・芝生広場・散策路・駐車場等、自然と人の活動の接点となる場に位置している。どの方向からも立ち寄りやすい円環状の庇空間を基本に、庇下にトイレブース、休憩スペース、洗面スペース等を隣接する環境に合わせて配置することで、立田山での自然体験をサポートする場を生み出したいと考えた。1本1本異なる表情を持つ原木から樹皮を剥いだだけの丸太を組み合わせたレシプロカル構造の架構がこの建築と自然との関係を深めている。また、壁には製材の残材として発生する背板を用いた。通常、チップ等、安価な用途に向けられることが多い背板を丸太の表面を活かした新たな材料として用いることで、その価値の見直しを図りたいと考えた。
丸太は原始時代から建築材料として用いられてきたが、近代以降、安全性を計算で確認する必要が生じたことや施工上の取り扱い等に起因して、木の規格・製品化が進んだ。その結果、一般流通材である105角の柱材をつくるためにはφ180程度の原木が必要となる等、環境面の負担やロス率も高くなっている。私達は、JAS規格もなく、個々に長さや太さ・強度が異なる丸太を現代の解析技術や加工技術を活かすことで、新たな木造建築の在り方が提示できないかと考えた。
利用する丸太の径はφ80~135程度と細径とし、通常はバイオマス燃料等にされてしまう木の先端に近い部分を使用している。丸太は受入検査において打撃法によるヤング係数の測定、含水率の測定、目視による欠点の確認を行い、許容応力度は無等級材として扱った。
幸い、熊本には丸太で建物を実現する土壌があり、関係者の木に対する深い関心や、知識・技術に助けられ、竣工を迎えることができた。熊本の「森と人の輪」がこれからも継続し、その輪が広がることを願っている。
  
* 建築データ 名 称:立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレ 所 在 地:熊本県熊本市北区乗越ヶ丘 用 途:公衆トイレ 建 築 主:熊本県 設 計 者:曽根拓也+坂本達典+内村梓+前原竹二(株式会社山下設計) 監 理 者:曽根拓也+坂本達典+内村梓+前原竹二(株式会社山下設計) 施 工 者:株式会社ウッディーファーム 敷地面積:17151.19平方メートル 建築面積:91.20平方メートル 延床面積:30.93平方メートル 階 数:地上1階 主体構造:木造 外 部 仕 上: 屋根 塩化ビニル樹脂系ルーフィングシートt1.5 外壁 背板(スギ)縦張りt15~30 床 コンクリート刷毛引き+浸透性表面硬化剤 施 工 期 間:2021年4月~2021年12月
* 建築家プロフィール ※写真の左側より 前原、坂本、曽根、内村
* 曽根 拓也(そね たくや) 1985年 東京都生まれ 2010年 早稲田大学院修士課程修了 2010年 株式会社山下設計入社 現在技術設計部門構造設計部 ●主な作品 稲敷市立新利根小学校 川口市役所第一本庁舎 GREEN SPRINGS A3地区
* 坂本 達典(さかもと たつのり) 1987年 埼玉県生まれ 2012年 工学院大学大学院 修士課程修了 2012年 株式会社山下設計 入社 現在建築設計部門第二設計部 ●主な作品 オリンピックアクアティクスセンター 新潟第一中学高等学校 宮の森メープル保育園
* 内村 梓(うちむら あずさ) 1989年 東京都生まれ 2014年 東京工業大学大学院修士課程修了 2014年 株式会社山下設計入社 現在建築設計部門第二設計部 ●主な作品 新宮市文化複合施設 柏原市庁舎
* 前原 竹二(まえはら たけじ) 1991年 静岡県生まれ 2016年 立命館大学大学院 修士課程修了 2016年 株式会社山下設計 入社 現在建築設計部門第三設計部 ●主な作品 あいち朝日遺跡ミュージアム 坂井市役所
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/115/51280.html
* 立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレ (PDFファイル:1.23MB)
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